
最近よく聞く「バイクパッキング」って結局何をするもの? 日本で初めてのバイクパッキング本を執筆した北澤肯さんが、バイクパッキングとは何か、また始めるために用意すべきアイテムなどを詳しく解説します。
バイクパッキングとは
山やバックカントリーの自然の中を自転車で旅するために、荷物を最小限にしてバイクに装着できるようにしたシステムが2000年代に入って開発されました。バックパッキングというキャンプ・ハイキングの活動がありますが、それを自転車でやることから、これがバイクパッキングと呼ばれるようになりました。
よくバイクパッキングはバイクパッキング用のバッグのことと誤解されがちですが、バイクパッキングはバッグや装備、荷物の積載方法のことではなく、そんな自転車旅のことです。このシステム、じつはロードバイクにも装着できることから、ロードバイクを使った舗装路の旅にも使われるようになり、現在では、オンロード・オフロード問わず、「自転車でライトウエイトにキャンプ旅をすること」をバイクパッキングと呼んでいます。
バイクパッキングの楽しさって?
それは、時間や場所に縛られることなく自分の体と頭で自由に旅ができることではないでしょうか。自転車なら公共交通にも縛られないですし。また装備が軽量なので、自転車本来の楽しさ、運動性能を損なわないということが、大きな魅力です。キャンプ道具でバイクが重すぎて、こぐのもやっとでは、楽しくないですからね。
バイクパッキングなら、車が入れないようなバックカントリーにも入っていけますし、ロードバイクでいくつもの峠を越えて、1日200㎞も移動する、そんなダイナミックな旅をすることも可能です。そして自然に抱かれて眠るのです。そんな「日常から脱する小さな大冒険」的な面白さが魅力だと思います。
バイクパッキングの三種の神器は、大型のサドルバッグ(通常10L~18L)、フレームバッグ、そしてハンドルバーバッグです。キャンプ用のロールマットを、テントを芯にして巻いてハンドルバーにストラップで留めれば、ハンドルバーバッグは必要ないので、最初はそんな感じでもいいかも知れません。そして、トップチューブの上に付けるトップチューブバッグや、ステムとハンドルの角に付けるステムバッグもあると、走行中でもスマホやカメラ、携帯食などの荷物が取り出しやすいので、旅もよりしやすくなります。
バッグ以外に持っていくべき荷物
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テント
まずはテントですね。でも山登りのように山岳地帯に行くわけではないのであれば、もっと軽量で簡易的なもので大丈夫です。通常のダブルウォール(2枚のシート構造)のテントではなく、シングルウォール(1枚構造)のシェルターやツェルト、またタープという一枚の布をポールや自転車自体をポール代わりにして雨よけとしてその下で寝たり、棺桶型のビヴィサックと呼ばれる小さな簡易テントで寝たりといった感じです。夏は蚊帳が必要な場合も。(泊まる場所の気温や環境、また天候にも気を付けて慎重に選びましょう)
シングルウォールのシェルターなら、モンベルのU.L.モノフレームシェルターが使いやすくていいかと思います。透湿性がないので結露には要注意ですが。
ビヴィサックなら、アウトドアリサーチのヘリウムビヴィですね。
タープならパーゴワークスのNINJAタープもいいかと思います。
寝袋
それから寝袋。これも高地に行くのでなければ500g以下の軽量のものを。(現地の気温はきちんと調べて選ぶこと)
OMMのマウンテンレイドや、ファイントラックのポリゴンネスト、ローカスギアのニィクス化繊キルトなどがおススメです。僕はブルックスレンジというメーカーのものを使っています。
スリーピングマット
それからスリーピングマット。これはエアーマットかロールマットか好みや状況に合わせて。ロールタイプなら信頼のサーマレスト。更に軽量を目指すなら、「山と道」やローカスギアから、超軽量、超薄のものも出ていますが、やや取り扱いに注意が必要です。
エアータイプなら定番のモンベル。またクライミットの肉抜きされたマットが超軽量、超コンパクトで良いかと思います。ただエアータイプは携帯性はいいですが、パンクのリスクや、膨らませたり畳んだりの手間があります。そのまま使えるので、休憩中にお尻に敷いたり、昼寝をしたりと、ロールマットのメリットも捨てがたいものがあります。
ヘッドランプ
キャンプ用のヘッドランプはマストですね。これは登山店で軽くてシンプルなモデルを探してみましょう。
調理用具
調理をするなら、コッヘル、マグカップ、クッカーに、箸、食料などのセットを。クッカーは使いやすさならガスカートリッジのもの、軽量さなら固形燃料が良いかと思います。
ガスカートリッジなら、SOTOやジェットボイル、プリムスや他にも良いものがいくつもあります。固形燃料は、DIYなところもあるので、ネットで自分で色々と調べてみると面白いかと思います。
雨具
それから防寒も兼ねたゴアテックスの雨具上下ですね。
キャンプ用水筒
最後にキャンプ用に2~3Lの水筒(プラティパスなどのクルクルっと小さく丸められるもの)
これらを通常のサイクリングの装備に加えれば、一応、バイクパッキングには出かけられると思います。詳しくはバイクパッキングBOOKをお読みください。
さあ、バイクパッキングを始めよう
最初は練習に、本番の装備で近くの公園や河川敷に行ってみて、テントやタープを立てる練習をしたり、そこで調理したり、お湯を沸かしてコーヒーを飲んだりするのも楽しいかもしれませんね。ライドでのデビューは、コースにもよるのですが、輪行で出かけて、最寄りの駅からキャンプ場まで20㎞も走れば十分な「バイクパッキング旅情」は味わえるのではないでしょうか。
慣れてきたら、距離を伸ばしたり、林道をつないでコースを作るのも楽しいかと思います。日本には素敵な林道がたくさんあるので、オートバイのツーリングマップなどで調べてコース案を練ってみましょう。ツーリングマップにはキャンプ場も載っていますし。ただ未舗装の林道は立派なバックカントリーです。ケガや遭難もありえるので、慎重に計画し、自分たちの安全確保をしましょう。またキャンプもどこでもやっていい訳ではありません。キャンプが許可されている場所でキャンプをしましょう。
バイクパッキングに強い自転車ショップさんが定期的にイベントややったり、しているので、そんなのに参加するのも最初は良いかと思います。僕らも5月にBikepacking Jamというビギナーを対象としたイベントを予定しています。(自転車の経験はある程度必要です)
バイクパッキングって、バッグ以外に何が必要なの? is a post from: FRAME : フレイム